介護技能実習評価試験とは
外国人技能実習制度とは
Ⅰ. 外国人技能実習制度の概要
技能実習制度は、我が国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として創設された制度です。
技能実習法には、技能実習制度が、このような国際協力という制度の趣旨・目的に反して、国内の人手不足を補う安価な労働力の確保等として使われることのないよう、以下の基本理念が定められています。
- 技能実習は、技能等の適正な修得、習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行わなければならないこと。
- 技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならないこと。
技能実習制度の内容は、外国人の技能実習生が、日本において企業や個人事業主等の実習実施者と雇用関係を結び、出身国において修得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を図るものです。このため、技能実習生の受入れに当たっては、技能等の修得・習熟・熟達に向けた技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構に提出することが必要となります。
Ⅱ. 技能実習生受入の方式
受け入れる方式には、企業単独型と団体監理型の2つの方式があります。
- 企業単独型:日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方式
- 団体監理型:事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方式
技能実習生は入国後に、日本語教育や技能実習生の法的保護に必要な知識等についての講習を受けた後、日本の企業等(実習実施者)との雇用関係の下で、実践的な技能等の修得を図ります(企業単独型の場合、講習の実施時期については入国直後でなくても可能です。)。
Ⅲ. 技能実習の区分と在留資格
技能実習の区分は、企業単独型と団体監理型の受入れ方式ごとに、入国後1年目の技能等を修得する活動(第1号技能実習)、2・3年目の技能等に習熟するための活動(第2号技能実習)、4年目・5年目の技能等に熟達する活動(第3号技能実習)の3つに分けられます。
企業単独型 | 団体監理型 | |
---|---|---|
入国1年目 (技能等を修得) |
第1号企業単独型技能実習 (在留資格「技能実習第1号イ」) |
第1号団体監理型技能実習 (在留資格「技能実習第1号ロ」) |
入国2・3年目 (技能等に習熟) |
第2号企業単独型技能実習 (在留資格「技能実習第2号イ」) |
第2号団体監理型技能実習 (在留資格「技能実習第2号ロ」) |
入国4・5年目 (技能等に熟達) |
第3号企業単独型技能実習 (在留資格「技能実習第3号イ」) |
第3号団体監理型技能実習 (在留資格「技能実習第3号ロ」) |
なお、第3号技能実習を実施できるのは、主務省令で定められた基準に適合していると認められた、優良な監理団体・実習実施者に限られます。
Ⅳ. 技能実習生の入国から帰国までの流れ
第1号技能実習から第2号技能実習へ、第2号技能実習から第3号技能実習へそれぞれ移行するためには、技能実習生本人が技能実習評価試験(2号への移行の場合は学科と実技、3号への移行の場合は実技)に合格していることが必要です。
また、第3号技能実習が修了する前にも、技能実習評価試験(実技)に受検する必要があり、技能実習期間が5年の場合、計3回技能実習評価試験を受検することになります。
介護技能実習評価試験の仕組み
Ⅰ. 介護技能実習評価試験とは
技能実習評価試験は、技能等の修得等の程度を測るために実施されるもので「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(第8条第2項6号)において、技能実習の目標は主務省令で指定する試験に合格することとされています。介護技能実習評価試験は、厚生労働省人材開発統括官により認定され、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則」(第6条)において指定された試験です。介護技能実習評価試験は、一般社団法人シルバーサービス振興会(以下、「シルバーサービス振興会」という)が実施しています。在留資格の変更又は取得、技能実習第2号や第3号修了時に受検が必要となります。
Ⅱ. 試験範囲
Ⅲ. 目標レベル
初級 | 指示の下であれば、決められた手順等に従って、基本的な介護を実践できるレベル |
---|---|
専門級 | 自ら、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を一定程度実践できるレベル |
上級 | 自ら、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を実践できるレベル |
Ⅳ. 試験内容
区分 | 学科試験 | 実技試験 | |||
---|---|---|---|---|---|
必須/任意 | 出題形式 | 時間 | 必須/任意 | 時間 | |
初級 | 必須 | 真偽法20問 | 60分 | 必須 | 60分 |
専門級 | (任意) | 真偽法30問 | 60分 | 必須 | 60分 |
上級 | (任意) | 多肢選択法50問 | 90分 | 必須 | 60分 |
Ⅴ. 合格基準
学科試験 | 得点合計が満点の65%以上 |
---|---|
実技試験 |
次の全てを満たす場合
|
Ⅵ. 試験時期
随時
ただし、各等級の試験には受検資格を設けております。
- 初級試験 :技能実習制度の介護職種に関し、6ヶ月以上の実務の経験*を有する者
- 専門級試験:技能実習制度の介護職種に関し、24ヶ月以上の実務の経験*を有する者
- 上級試験 :技能実習制度の介護職種に関し、48ヶ月以上の実務の経験*を有する者
*入国後講習の期間は含めません。
Ⅶ. 試験場所
技能実習生が勤務している事業所・施設
技能実習(介護職種)とは
Ⅰ. 介護職種追加の趣旨
技能実習制度の対象職種への介護職種の追加については、技能実習制度の趣旨に沿って「人材育成を通じた開発途上地域等への技能等の移転による国際協力の推進を図ることを目的」とするものであり、介護人材の不足への対応を目的とするものではありません。日本は他国と比較して、高齢化が急速に進展し、認知症高齢者の増加等、介護ニーズの高度化、多様化に対応しており、海外からは日本の介護技術を取り入れようとする動きも出てきています。こうしたことを踏まえれば、日本の介護技術を他国に移転することは、国際的にも意義のあるものであり、技能実習制度の趣旨にも適うものであります。
(2016年11月28日 社援発1128第6号「外国人技能実習制度への介護職種の追加等について(通知)」)
Ⅱ. 介護職種を追加するに当たって
介護職種での技能実習生受入れに当たっての要件は、厚生労働省における「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会 中間まとめ(2015 年2 月4 日)」での提言内容に沿って設定されました。
その基本的な考え方は、介護職種の追加に対する様々な懸念に対応するため、以下の3つの要件に対応できるよう制度設計を行うというものです。
- 介護が「外国人が担う単純な仕事」というイメージにならないようにすること。
- 外国人について、日本人と同様に適切な処遇を確保し、日本人労働者の処遇・労働環境の改善の努力が損なわれないようにすること。
- 介護のサービスの質を担保するとともに、利用者の不安を招かないようにすること。
これら3つの要件に対応するため、技能実習制度本体による対応とともに介護職種に固有の各種要件が整備されており、介護職種の技能実習生を受け入れる場合、技能実習制度本体の要件に加えて、介護職種固有の要件を満たす必要があります。
Ⅲ. 主な介護固有の要件について
介護の技能実習生の受入れに当たっての要件は、「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会中間まとめ」での提言内容に沿って設定されています。
Ⅳ. 技能実習生について
1.日本語能力要件
介護職種で技能実習を行うには、技能実習生の日本語能力が一定水準以上であることが必要となります。そのため、第1号技能実習生と第2号技能実習生の技能実習生本人について、日本語能力に関し、以下の要件を満たす必要があります。
第1号技能実習 (1年目) |
日本語能力試験のN4に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者*であること。 |
---|---|
第2号技能実習 (2年目) |
日本語能力試験のN3に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者*であること。 |
*「これと同等以上の能力を有すると認められる者」とは、日本語能力試験との対応関係が明確にされている日本語能力を評価する試験(現在認められているのは「J.TEST実用日本語検定」「日本語NAT-TEST」の2つ)で、上記と同等レベルに相当するものに合格している者をいいます。
2.同等業務従事経験(いわゆる職歴要件)
団体監理型技能実習の場合、技能実習生は「日本において従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験があること(同等業務従事経験)」もしくは「団体監理型技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること」を要件として満たすことが必要とされています。介護職種の場合の同等業務従事経験については、たとえば、以下の者が該当するとされています。
- 外国における高齢者若しくは障害者の介護施設又は居宅等において、高齢者又は障害者の日常生活上の世話、機能訓練又は療養上の世話等に従事した経験を有する者
- 外国における看護課程を修了した者又は看護師資格を有する者
- 外国政府による介護士認定等を受けた者
Ⅴ. 実習実施者について
1.技能実習指導員について
介護職種での技能実習指導員については、下記の要件を満たすことが必要です。
- 技能実習指導員のうち1名以上は、介護福祉士の資格を有する者その他これと同等以上の専門的知識及び技術を有すると認められる者(※看護師等)であること。
- 技能実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を選任していること。
技能実習制度本体の要件には、技能実習指導員の配置人数について、技能実習生の人数に応じた基準は、特段ありませんが(各事業所に1名以上選任していることが必要)、介護職種の場合、技能実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を配置することが必要です。
2.技能実習を行わせる事業所について
技能実習を行わせる事業所については、下記の要件を満たすことが必要です。
- 技能実習を行わせる事業所が、介護等の業務(利用者の居宅においてサービスを提供する業務を除く。)を行うものであること。
- 技能実習を行わせる事業所が、開設後3年以上経過していること。
- 技能実習を行う事業所における技能実習生の数が一定数を超えないこと。
3.対象施設
訪問介護などの訪問系サービスについては、適切な指導体制を取ることが困難であること等の理由で、技能実習の対象になっていません。
その他の介護固有要件の詳細は、厚生労働省または外国人技能実習機構のHPをご確認ください。
Ⅵ. 移転の対象となる技能等
外国人技能実習制度においては、介護業務を、身体上または精神上の障害があることにより、日常生活を営むのに支障がある人に対し、入浴や排泄、食事などの身体上の介助やこれに関連する業務と定義しています。また、関係省令において、業務は下表のように区分されており、当該業務に従事させる時間も定められています。
区 分 | 内 容 | 実習計画に含まれる割合 |
---|---|---|
(1)必須業務 | 技能実習生が技能等を修得等するために必ず行わなければならない業務をいう | 業務に従事させる時間全体の二分の一以上であること |
(2)関連業務 | 必須業務に従事する者により当該必須業務に関連して行われることのある業務であって、修得等をさせようとする技能等の向上に直接又は間接に寄与する業務をいう。 | 業務に従事させる時間全体の二分の一以下であること。 |
(3)周辺業務 | 必須業務に従事する者が当該必須業務に関連して通常携わる業務((2)に掲げるものを除く。)をいう。 | 業務に従事させる時間全体の三分の一以下であること。 |
(4)安全衛生に 係る業務 |
(1)から(3)までに掲げる業務について、それぞれ、従事させる時間のうち十分の一以上を充てること。 |
介護業務における各区分の業務の内容は次のとおりです。